キネステティク

介護

『動きの感覚』『効率的動作』

 

人間の運動パターンを理解すれば治療効果も上がり、生活指導もできます

もともとは、コミュニケーションの概念として考えられた『動きの感覚』を、障害児の教育や看護の世界に活用されました。それから、介護される方の自然な動きや人体構造の理にかなった動きに着目し体系づけられたのがキネステティクです。
動きも、コミュニケーションのひとつであるという基本的概念のもとに、介護される方にとって自然であり、最も効率のよい動きを分析し介助者はそれを効率良くおこなえるよう補助することが基本になります。 これまでの介助者主導のボディメカニクスは、介助者の負担を強いていましたが、キネステティクでは、介護される方主導であり、理にかなった自然な動きを利用することで、介助される方のさまざまな不安を軽減し、 自己動作感が得られるメリットもあります。また、介助を必要とせずにさまざまな動作ができる可能性がでてきます。

パラレルとスパイラル

キネステティクでは、『パラレルな動き』と『スパイラルな動き』に分けられます。この二つの違いは重さを支えるところと移動するところが違います。 平行・垂直に動かすのがパラレルな動きで、体を回転させながら動かすのがスパイラルな動きとなります。パラレルは直線的に動作で、時間・空間を節約し、 一部の筋肉を集中的に使いますから、力をたくさん使います。スパイラルは、さまざまな筋肉を少しづつ分散して使い、少ない力で時間・空間を使います。 スパイラルはまた、いろいろな変化パターンが考えられます。同じ目的でも、スパイラルのほうが楽だからスパイラルが良いとは言えません。 お互いのメリット・デメリットを考えて利用者の年齢や体格などの身体的要素や生活パターンなどを加味して、利用者にとって適切な動きができることが目的です。

『パラレルな動き』と『スパイラルな動き』

パラレルとかスパイラルとか言われても、イメージ的にはわかる気もしますが、実際にはどのようになっているか見てみましょう。

たとえば、イスやベットから立ち上がる動作を考えてみましょう。若い方なら普通に前にすっと立ち上がりますね、これがパラレルです。 広い空間はいらないかわりに短い時間で立ち上がれますが力が必要です。でも若ければ気になりませんね、苦にならなければパラレルで良いわけです。 しかし、お年を召した方は筋力が低下しているために、なかなかお尻が上がらず、“どっこらしょ”と何度か勢いをつけて立ち上がる方もいます。 このようなときにはスパイラルな動作を行う前にバランス移動を利用することも出来ます。たいてい“どっこらしょ”の方達は、足を遠い位置に置いて、 立ち上がりの時に頭の位置を気にしないで立ち上がろうとする方が多く見られます。足を遠くにおくと、上体を前に倒してお尻にある重心を足に移すのが難しくなります。 ですから、なかなかお尻が上がらないわけです。このようなときは、足をなるべく近くに引き寄せ、おへそをのぞき込むようにして上体を前に倒し、重心線を移動します。 お尻にかけていた体重を足に乗せるようなイメージです。重心の移動がうまくいけば、お尻が“ひょい”と持ち上がります。 それでも、立ち上がるのがきついという方には、スパイラルな動作を試してみましょう。 たとえば、左に上体を捻りながら、カラダも傾け、左手もつきます。そうすると、いわゆる半ケツ状態で重心移動がおこります。 あとは、捻りながら上体を前に倒してお尻にある重心を少しずつ移動させを足に乗せていきます。 パラレルのように一気ではなく、無理の無いように時間と空間をかけながら行います。そのとき、おへそを見ながら動作をして下さい。

寝た状態よりパラレルな動き起き上がる

腰部捻挫(ギックリ腰)や慢性の腰痛などで、ベットより起き上がる際に、そんな起き上がり方したら余計に痛いはずなのにと思われる起き方を多く見かけます。上向きでもうつぶせでも腹筋を使って上体を力ずくで起き上がります。痛い上に力がたくさん 使います。効率的ではありませんね。

この動作は、パラレルな動作です。力を使って直線的に短時間で動作を完了できるのですが、腰に負担がかかり痛みが増大しますし、筋力の弱い方にはさらに負担がかかります。健康で筋力のある方なら無意識にこの動作をしていますが、腰の悪い方やお年寄りの方などは、負担が少なく小さい力で起き上がる方法のおぼえましょう。

寝た状態よりスパイラルな動きで起き上がる

スパイラルな動作は、少ない力で行ないますが、時間と空間が必要です。スパイラルは自分にあったいろいろなパターンを考えて動作するので、その人にあったパターンが幾通りもあります。たとえば、上向きから起き上がるには、【捻り+縮める】上体を捻りながら膝を曲げて丸まるように横を向きます。横を向いたら、下になった方の膝をさらに曲げていき、起きやすい位置に上肢をもっていく。さらに下半身と上半身を引きつけるようにして身体を丸めて横から起き上がるように手で支えながら上半身をさらにねじって起き上がります。同じ目的でも、パラレルとスパイラルのメリット・デメリットを考えて、その人に最適な方法を選択することが必要だと思います。楽だからと言う選択ではなく総合的に判断して決めることが大切であると思います。

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